術後の感染症で死亡 東京地裁、医師に1300万賠償命令

http://www.sankei.co.jp/news/061123/sha002.htm

がんで「余命6カ月」と診断されて7カ月目に死亡したギャラリー経営の女性=当時(71)=の遺族2人が、「死亡はがんではなく手術後の感染症のためで、感染症を防ぐことを怠った医師に責任がある」として、岡山市の病院医師に約4500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、東京地裁であった。藤山雅行裁判長は医師のミスを認め、約1300万円の支払いを命じた。
藤山裁判長は、女性は手術後に挿入されたカテーテルが原因で感染症にかかったと認定。「女性はがんで早晩死亡していたはずだが、感染症によって死期が早められた」と述べ、医師の責任を認めた。
その上で、藤山裁判長は「人生最期の身辺整理などができなかった精神的損害は大きい」として、医師側に賠償を命じた。
女性の遺族は慰謝料の内訳として、女性が死亡したことによる遺失利益約1500万円も請求していたが、藤山裁判長は遺失利益については「女性が仕事に復帰できたかは明らかでない」と判断して認めなかった。
判決によると、女性は平成13年4月、脳に転移する大腸がんが見つかり翌5月に医師の手術を受け、輸液のためのカテーテルを挿入された。その後、体調が悪化して転院し同年12月に死亡した。

毎日新聞の記事…損賠訴訟:大腸がんと診断、別の病気で死亡…慰謝料認める

手術をしても余命約6カ月の大腸がんと診断され、術後7カ月に別の病気で死亡した女性(当時71歳)の遺族が「別の病気で死んだのは術後管理のミス」として、病院側に約4500万円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は22日、約1300万円の支払いを命じた。女性はほぼ診断通りの余命だったものの、藤山雅行裁判長は「ミスがなければ、人生の最期を自宅で家族と過ごすことができたはずで、女性は精神的損害を受けた」と慰謝料請求を認めた。
判決によると、女性は01年5月、岡山市にあるこの病院で大腸がんの摘出手術を受けた後、栄養補給用のカテーテルを右の鎖骨付近に約1カ月挿入したままで感染症にかかった。それでも担当医がカテーテルを外さないミスをしたため、敗血症を発症して同12月に転院先で死亡した。
一方、余命約6カ月と診断されていたことから通常は賠償対象になる逸失利益や葬儀費用の請求を「ミスとの因果関係が認められない」として退けた。

最初に毎日の記事を読んで、最後の一文にたまげた。この書き方だと極端な話、医者が余命をものすごく短く言うと逸失利益が否定されるような印象を受け、原告側から見たときにとんでもない判決に思えてしまう*1。で、産経見たら「仕事に復帰できたかは明らかではない」が逸失利益却下の理由だった。それなら分かりやすい*2。毎日は医療絡みの報道を頑張る割に、「別の病気で」とかどうも洗練されてないなぁ。
術後感染症死をミスとした藤山裁きは記事から状況がさっぱり分からないのでスルー。産経の書き方だと「術後感染を100%防げなかったら医療ミス」と読めるので、読んだ人間に「術後感染=医療過誤」の恒等式がインプットされる虞がある点は頂けないが。
と言っても、裁判官の脳内では既にその恒等式は成立していると思うんだよね。藤山裁きじゃなくも賠償額の違いこそあるかもしれないが過誤自体は認定されたと思うし、これは控訴しても覆らないと思う。裁判官に絶望しすぎかしら。

*1:もちろん、実際に「余命」をあまりに短く言ってたらその余命宣告自体が認められていないだろうが。

*2:でも、「余命6カ月の宣告があったから」が「仕事に復帰できたかは明らかではない」の理由であるならばやっぱり納得できないなぁ。個別の余命宣告なんてそんなに当てになる数字かね。この症例は脳転移もあったみたいだし「早晩死亡していた」は揺るがないと思うけども。