http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060724132556.pdf
珍しい原告全面勝訴の医療訴訟。
おじいちゃんがコンクリート製の外階段で転んで座り込んでいるところを発見され救急搬送→主訴は左大腿部の痛み、整形外科医の問診に「頭や首は打っていない、痛くない」→骨盤CT等で左大腿骨頚部骨折および骨盤骨折疑いで入院→搬送から4時間、意識レベルが低下したため頭部CT等施行、頭蓋骨骨折、急性硬膜下血腫、脳室内出血と診断→脳神経外科を持つ病院に搬送され手術(初診から7時間)→2ヵ月半後に死亡。
問診の「頭を打っていない」は外傷性健忘であり、状況的に頭蓋骨骨折するほど頭部を打っていたのは明らかなんだから「頭を打っていない」という返答から外傷性健忘を疑うべきで、さらに受傷時の様子を尋ねれば外傷性健忘の所見が得られ、頭部外傷を疑われ頭部CT等が施行されて急性硬膜下血腫が診断され早期に手術を受けて救命されたはずなのでアウト、なんだそうです。

ところで,前提事実等によれば,事後的客観的にみる限り,Eは,本件転倒事故により頭部を頭蓋骨骨折が生じたほどの強さで打っていたことが明らかであるにもかかわらず,G医師による問診時に頭は打っていないなどと明確に答えたというのであるから,その時点で外傷性健忘を来していたことが優に認められるのであり,同医師が上記の事故態様等についての詳細な問診を実施していれば,Eが本件転倒事故の具体的な経過,態様等を明確には覚えていないことが判明した蓋然性が高く,したがってまた,Eが外傷性健忘に陥っており,頭部外傷の疑いが残ることを容易に認識することができ(この点,証拠(甲A2,原告A本人)によれば,Eは,原告Aに発見された時,どこからどのように落ちたのか分からないと答えていたことが認められる。),頭部のレントゲン検査ないしCT検査が実施されることになったであろうことが認められる。

「事後的客観的」というフレーズは東京地裁民事第14部が好んで使うようだ。所謂「後出しジャンケン」っぽくてあまり印象の良い言葉ではないね。もっとも、医療側全面勝訴の判決でも使われているので、単純に好きなフレーズってだけかもしれない。