第1章掲載からもう3週間経ったけど、第2章までまだ2週間ある……やっぱり月刊はインターバルが長い。
と思ったけど、何度も読み返す時間があると考えることにする。いや、最初読んだとき、『「勇者様」と「ニケ君」の間でゆれる心を表現したグルグル』である『乳者様』が、なんで「勇者様と旅に出たい」という願望から発動したのかよく分からなかったんですよ。釈然としないながらも、締めはいい感じにクサくてこれが俺の求めているグルグルなのでまあいいかとか思いつつ、何度も何度も読み返してようやく『なぜニケがコーダイ兵に連れて行かれる時だけ、わざわざニケ君と言い直しているのか』という所に違和感を持って、しばらくそのことばかり考え続けてやっと『乳者様』が理解できたのは第1章掲載から2週間後。こんな分かりやすい描写があるのに、俺みたいな読解力の無い人間は月刊ペースくらいの時間が無いと理解できないんだなあ、と思ったわけです。
何が言いたいかというと、Web廃墟と化しているファンサイトを見るにつけ、また考察とかしてくれるサイトが出てきて欲しいなあ、と。自分では読解できないけど、他人の考察やら解説やらを読むのは好きなので。
以下、チラ裏俺用メモ
開始直後にメッセージウィンドウでククリとニケの現在の職業がともに『がくせい』であると明示。『勇者と魔法使い』ではなくなったが対等の関係。
『乳者様』という単語の初出時は、『同級生に対する正しい呼び方として先生に促された「ニケ君」』と『ククリにとって慣れ親しんだ二人称「勇者様」』が、ククリ自身の照れによって『ニケ君』と呼べずに混ざってしまったもの。ククリのモノローグで、『恋するハート』発動後もニケとの関係は特に進展していない/むしろ後退していること、ククリにとって『ニケ君』という呼称はニケとの関係の進展の証としてとらえられていることが語られる。先生の言う『ニケ君』とククリにとっての『ニケ君』は、この時点では違う。これに騙された。
この時のモノローグで同時に「もうグルグルも使えない」「ふつうのアホな子になっちゃった」という漠然とした不安が示され、ニケパートを挟んだ後に、「もし本当に今魔王が現れたら」「こんどは勇者様といっしょに旅立てない」と具体的な危機感を持つククリ。その懸念はすぐに現実のものとなり、コーダイ兵が『勇者ニケ』の召集に現れる。『がくせい』から『ゆうしゃ』に再び祭り上げられたニケに対して、グルグルの使えないただのアホな『がくせい』であるククリは、ニケの勇者としての活躍を見たい思いがために『勇者様』と呼び旅立ちを促しつつも、ニケがコーダイ兵に連れて行かれる別れ際のシーンだけ「ゆ…じゃなかった」「ニ…ケ君…」と言い直す。
この時の『ニケ君』は『関係の進展の証』ではなく『同級生に対する呼び方』の方だ、ということになかなか気付けなかった。同時に『勇者様』も、『これまで慣れ親しんだ二人称』というよりは、『世界を救う者の称号としての勇者』に重点がシフトしている。『勇者と魔法使い』という対等な関係にはもうなれず一緒に旅立つこともできないということを嫌でも自覚させられながら、それならば『学生同士』という対等な同級生として一緒にいて欲しいという願いを、ククリらしい控えめな表現で、でも必死に伝えようとしている、いじらしいシーンだった。魔境編の「クーちゃんらしいひかえめな答え」に何となく通じるものがある。
それで、『勇者様』(=ニケが勇者として活躍してほしいという思い、ただしククリ自身は同行できない)と『ニケ君』(=ニケに同級生として一緒にいて欲しいという願い)との間でゆれる心に、『グルグルが使えれば一緒に旅に出られる、魔法を再び使えるようになりたい』という願望が加わって『乳者様』が誕生した。
ラストでちゃんと【ククリ まほうつかい】のメッセージウィンドウを表示して、ニケとククリが再び対等の関係になったことを明示して締め。
要は、『勇者様』も『ニケ君』も、この第1章の前半と後半で違う使われ方をしている点を読めていなかった。
『乳者様』はククリの心情描写だけど、ニケの方も『乳者様』発動=グルグル復活の前後で旅立ちに対する態度が変わっている。
バドとのやり取りでは「II」は断固拒否、ククリにも「魔王なんかどうでもいい」、コーダイ兵にも「断ったら…どうなるの?」と全力で後ろ向き。「テストさぼれる」に釣られてコーダイに同行することにはしたものの、「だいじょうぶ たぶんなんかの間違いだよ」「行ってくる」とすぐに帰る気満々。
『乳者様』発動後は、わざわざ学校まで戻ってきて「やったじゃん!」、コーダイ王のククリ召集に対して嬉しそうに「ククリ!」。その後のコーダイへの道中では、旅立ちにネガティブな発言は見られない。
ニケの性格なんで半分は本当にめんどくさかったのが理由かもしれんけど、やっぱりグルグルを使えなくなったククリに気を使っていたんだろうなあ、と。「まいったな でもオレは…」の後に濁された言葉は、「面倒だから」とか「お金はもう腐るほどあるから」とかではなかったはず。ニケもククリ同様、それを言葉にすることはできないだろうけれども。だがそれがいい。
こうして見ると、第1章全体を無駄なく使ってニケとククリの関係と双方の心情を描写していたのだなあ、ぼくにはとてもできない。
『乳者様』発動の原動力を、ニケもククリも「勉強がイヤだったから」に求めている点は、まだあまり理解できていない。「勇者様と旅に出たい」が最大の原動力だと思うんだが。発動直前にも「勉強なんか大キライ」とククリに言わせているので、「勉強がイヤ」が全く寄与しなかったわけではないんだろうけど。締めに「勇者様と旅に出られる」を持ってくる展開のためだろうか。