転院断られ死亡の妊婦、詳細な診療情報がネットに流出

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070429i401.htm
大淀事件の(たぶんm3経由の)診療経過流出が案の定問題化。昨日の某シンポ絡みですな。
N速+スレは医者だらけだからなのかマスコミVSネットの構図だからなのか擁護論の方が優勢だけど、これは限りなくアウトに近いと思う。遺族の弁護士は個人情報保護条例に基づく対処を町に要請、同条例及び地方公務員法守秘義務違反で告訴するらしいけど、「カルテのコピー」の入手経路等の状況によっては誰かが刑法第134条のお世話になってもおかしくないような気がする。流出元(≠書き込みまたは転載した者)が医師かどうか分からないから刑法での告訴じゃないってことなのかな。
刑事的にセーフになりそうな状況を考えると、「カルテのコピーは遺族からマスコミに渡されたものと同じであり、診療情報は全てそれに基づいている」「病院の勤務体制とかは個人情報関係ないのでセーフ」くらいか*1。それでも民事で訴えられたらそっちはどうなんだろう。意図したのと違う使われ方をしているわけだからなあ。
個人情報保護法は「生存する個人に関する情報」ではないので適用範囲外だろうか。個人情報保護条例がどうなっているのかは分からない。ん、はてなキーワードを見ると「ただし亡くなった方でも遺族等、現在、生存している個人に影響がある場合は個人情報の対象となります」と書いてあるな。

奈良県大淀町の町立大淀病院で昨年8月、高崎実香さん(当時32歳)が出産時に脳内出血を起こし、19病院に転院受け入れを断られた後、死亡した問題で、高崎さんの診療経過など極めて詳細な個人情報がインターネット上に流出していることがわかった。
情報は医師専用の掲示板に、関係者らしい人物が書き込んだとみられ、「転載して結構です」としていたため、同じ内容が、医師や弁護士など、かなりの数のブログに転載されている。
遺族側の石川寛俊弁護士が28日、大阪市内で開かれた産科医療をめぐる市民団体のシンポジウムで明らかにした。石川弁護士は、個人情報保護条例に基づく対処を町に要請した。遺族は条例違反(秘密漏示)などでの刑事告訴も検討している。
書き込みは、昨年10月に問題が報道された翌日から始まった。仮名で「ソース(情報源)が確実なきょう聞いた話」「この文章はカルテのコピーを見ながらまとめました」などとして、最終月経の日付から妊娠中の経過、8月7日に入院して意識不明になるまでの身体状況や検査値、会話など、カルテや看護記録とほぼ同じ内容を複数回に分けて克明に書き込んでいた。
この中には、入院前の記録など、当時、遺族が入手していなかった内容や、医師の勤務状況など病院関係者しか知らない内容も含まれていた。
石川弁護士は「主治医と家族のやりとりを近くで聞いていた人物としか思えない書き込みもある。許しがたい」と批判している。
遺族は「あまりに個人的な内容で驚いた。患者の情報が断りもなく第三者に伝わるなら、診察室で何も言えない」と話している。
大淀病院の横沢一二三事務局長は「高崎さんが入院した日に病院にいた職員を対象に聞き取りをした。全員が『情報を漏らしたことはない』と答えたので調査を終えたが、遺族の弁護士には伝えていない。掲示板の運営事業者への照会などは思いつかなかった。再度検討する」と話している。

朝日
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200704280077.html

診療情報ネット流出 遺族、告訴へ 奈良・妊婦死亡
奈良県大淀町の町立大淀病院で昨年8月、分娩(ぶんべん)中に意識不明となった妊婦(当時32)が県内外の計19病院に転院の受け入れを断られた末、出産後に脳内出血で死亡した問題で、妊婦の詳しい個人病歴情報や診療経過がネット上に流出していたことがわかり、遺族は近く、大淀町長や病院関係者を地方公務員法守秘義務)違反と町個人情報保護条例違反で奈良県警に告訴する方針を決めた。個人の医療情報の流出を巡って、病院関係者を告訴するのはきわめて珍しいという。
遺族によると、流出先のインターネット上のサイトは会員制の医師専用の掲示板で、「大淀病院関係者から入手した情報」として、妊婦の入院前後の経過や病歴情報、診断内容の詳細が流されている。遺族には、病院側からカルテや看護記録などが開示されているが、流出情報にはそれ以上の詳しい内容も含まれているという。
この問題で奈良県警は、担当医が診断した子癇(しかん)発作との判断に誤りがなかったか、業務上過失致死容疑で捜査している。
遺族は「町に調査を求める申入書を出したが返答がない。誠意が感じられない」としている。

毎日
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20070430k0000m040087000c.html

診療情報流出:19病院で転送断られた妊婦遺族が告訴へ
奈良県大淀町の町立大淀病院で昨年8月、分娩(ぶんべん)中に意識不明になった高崎実香さん(当時32歳)=同県五條市=が、県内外の19病院で転送を断られた末に搬送先の病院で出産後に死亡した問題で、高崎さんの診療情報がインターネット上に流出していたことが分かった。遺族は被疑者不詳のまま町個人情報保護条例違反容疑で、5月にも県警に告訴する。
流出したのは、高崎さんの看護記録や意識を失った時刻、医師と遺族のやりとりなど。ネット上の医師専用の掲示板に書き込まれ、多数のブログなどに転載された。この掲示板は登録者数10万人以上で、問題が報道された昨年10月から書き込みが始まった。
遺族は「医師専用掲示板には患者の中傷があふれている。診療情報の流出は自分たちだけの問題ではないと思い、告訴に踏み切ることを決めた」と話している。

*1:もっとも、法律は全くの素人なので、それで本当に刑事的にセーフなのか分からない。また、遺族は「自分たちの知らない情報も記載されていた」としている。